最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)278 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人安田忠治の上告趣意は添附別紙に記載の通りである。
横領罪が成立するには、不法領得の意思の存在を必要とすること、所論の通りで
ある。また、本件被告人が、原審公判廷において、原判示金員の費消は被害者Aの
承諾の上である旨弁疏して、不法領得の意思を否認したことは、原審公判調書によ
つて明かであり、原判決の証拠説明にもあらわれてゐるところであつて、これ亦所
論の通りである。然しながら原判決は、被告人の不法領得の意思を認定し得べき何
等の証拠をも示さずに、右のような被告人の供述のみから横領罪の認定をしたので
はなく、被害者Aが第一審公判廷に於て証人として陳述した原判示事実に照応する
横領被害顛末の証言、即ち被告人が弁解するように金員費消の承諾を与えた事実は
ないという内容の供述と前記被告人の供述とを綜合して横領の事実を認定している
のである。論旨は、原判決が右の被告人の弁疏を何故に無視したのであるかの理由
を説示しなかつたことを攻撃しているけれども、これは刑事訴訟法第三百六十条第
二項にあたる場合ではないから、その必要はない。それ故に原判決には所論のよう
な、横領罪に関する法の解釈適用を誤りたる違法もないし、理由不備の違法もなく、
上告は理由がない。
よつて、刑事訴訟法第四百四十六条により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
検察官 宮本増蔵関与
昭和二十三年六月八日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
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裁判官 井 上 登
裁判官 庄 野 理 一
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
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